社労士が答える労務管理のポイント

FAQ

同一労働同一賃金

 今回の法改正における同一労働同一賃金の導入は、同一企業内における正職員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規職員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。同一企業内において、正職員と非正規職員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止になり、裁判の際に判断基準となる「均等待遇規定」「均衡待遇規定」が法律に整備されて、2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)より施行されます。
「均等待遇」とは、職務内容等働き方の前提条件が同じならば、同じ待遇にしなければならないという考え方であり、一方、「均衡待遇」とは、それらに違いがあるなら、その違いに応じて待遇の違いがバランスの取れたものとなっていることを求める考え方です。
また、「同一労働同一賃金ガイドライン」が策定され、同一企業・団体における正職員と非正規職員との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例が示されました。

「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000470304.pdf
同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号) https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

 2020年4月1日から、たとえパート・アルバイト(非正規職員)であっても、正職員と同一の労働であれば同一の賃金を支払わなければなりません(均等待遇)。原則として、正職員の賃金水準に合わせなければなりません。また、正職員とパート等で業務の内容及び責任の程度に差があるため、待遇差を設けている場合であっても、その待遇差は不合理なものであってはいけません(均衡待遇)。

 時間外労働における割増賃金は、「法定労働時間を超えて労働した場合」に支給が義務づけられているものであり、その要件を満たせば正職員・非正規職員に関わらず支給されるものであります。単に「正職員だから、非正規職員だから」という理由のみで割増率に差を設けている場合は不合理と判断されかねません。法定労働時間を超えて残業したという事実は、正職員であれ非正規職員であれ変わらない以上、割増率に差を設ける合理的理由は無いものと判断されてしまいます。残業を行う上で、行う業務が違い、それに伴う負荷が異なるために差を設けている場合であっても、割増賃金率に差を設けるのではなく、役職手当等、別の諸手当で差を設けたほうが良いのでないでしょうか。

 正職員と同様の出勤日が設定されているパートには、原則、正職員と同様の慶弔休暇を与えなければなりません。
ただし、正職員より労働日数が少ないことにより差を設けることは可能です。例えば、週2日のパートに対しては、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を与えることは問題とならないと考えられます。

働き方改革

 2019年4月1日より労働基準法が改正になり、時間外労働や休日労働についても厳格化されることになりました(※中小企業については2020年4月1日より適用となります)。この改正は政府の働き方改革の一環として長時間労働の抑制と労働者の生産性の向上を目的に実施されるものです。その具体的な内容としては

〇残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別な事情がなければこれを超えることはできません。
〇臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合(これを「特別条項」といいます)でも、以下を守らなければなりません。
 ・年間720時間以内
 ・2~6ヶ月平均で80時間以内(※休日労働を含みます)
 ・単月において100時間未満(※休日労働を含みます)
 ・月45時間を超えることができるのは年間で6ヶ月まで

なお、上記に違反した場合には、罰則を科される恐れがありますので注意が必要です(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。
今回の改正は職員の健康管理やワーク・ライフ・バランスの観点からも大変重要な事項になります。
しっかり内容を理解した上で法律に基づいた管理をお願いいたします。

 医業に従事する医師は、時間外労働の上限規制の適用が改正法施行後5年間猶予され、5年後から適用されることになっています。
5年間は、上限規制を適用するための問題点の解決や課題の達成のために、「医師の偏在」や「地域医療提供体制」等についての検討が引き続き行われています。

 年次有給休暇が10日以上付与される職員に対し、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
時季の指定に当たっては、職員の意見を聴取しなければならず、また、できる限り職員の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
なお、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している職員に対しては、時季指定をする必要はなく、また、することもできません。

 インターバル制度とは、終業の時刻から次の始業の時刻までの間に一定の時間を空けるようにする制度です。事業主の責務としてインターバル制度を含む必要な措置を講じるように努めなくてはならないと定められました。
例えば、始業が8時で終業が17時の勤務において、急な仕事が入り深夜0時まで時間外勤務をした場合、終業時刻から次の始業時刻までの間隔が8時間しかなく、通勤時間や生活時間を考えると、次の始業時刻までに十分な休息が取れません。その際に始業時間を後ろ倒しにするなどして、一定の休息時間を確保するものです。

制度導入のメリットとして
・魅力ある職場づくりにより人材確保・定着につながる
・病院の利益率や生産性を高める可能性が考えられる
・健康維持に向けた睡眠時間の確保につながる
・生活時間の確保によりワーク・ライフ・バランスの実現に資する
等がいわれています。

また、終業と始業の間の時刻(以下「インターバル」)を設定する際にも「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」に配慮して設定を行う必要があります。

インターバル制度で設定する時間数は、一律に定められたものはありません。

同様の制度を導入しているEUでは、EU指令において加盟国の全ての労働者に24時間ごとに最低でも連続11時間の休息期間を確保するとされています。また労働基準法の改正による、高度プロフェッショナル制度の対象労働者への健康確保のための選択的措置の1つとして、使用者は始業から24時間を経過するまでに11時間以上の継続した休息時間を確保することとされています。
これらはインターバル制度を導入する際に設定する時間数の参考になると思います。

2019年度はインターバル制度導入に関する助成金があります。
詳しくはこちらへ(厚労省の助成金ページへリンク)
時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)

労働時間

 労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間」をいうとされています。つまり、実際に業務を行っている時間はもちろん、指定の制服へ着替えることが義務付けられている場合の更衣時間や、業務を行うために待機している時間(手待時間)も含めた時間が、労働時間に該当します。
就業規則や個別の労働契約で具体的に労働時間を決めたとしても、労働時間に当たるか否かは客観的に決まるものであり、現実に使用者の指揮命令下にあって、労働者が自由に休憩等することができない時間であれば、労働時間ということになります。
また、使用者の指示を受けていない、いわゆる自発的残業についても、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間にあたるとされており、自発的残業を労働時間としない為には、使用者は普段から自発的残業等をしないことを明確に指示し、行われている場合には中止させる等の対応を日頃から行う必要があります。ただし、残業しなければ処理しきれない業務量を与えておきながら自発的残業を禁止したとしても、形式的な指示であると判断されてしまい、労働時間に該当することとなってしまいます。

変形労働時間制

 労働基準法では、原則1日8時間・1週間40時間(以下、法定労働時間)を超えて労働させることはできません。(法定労働時間を超えて勤務した時間は時間外手当の支払いが必要となります。)
しかし、病棟の夜勤勤務などの場合、労働時間が1日16時間に及ぶケースなどがある為、変形労働時間制を導入しない限り、法定労働時間内で勤務シフトを組むことはできません。
そこで、ご質問にあるような日勤や夜勤など複雑な勤務シフトのある医療機関が利用しやすい変形労働時間制として「1か月単位の変形労働時間制」が挙げられます。
この「1か月単位の変形労働時間制」は1か月以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間を40時間以内となるように、あらかじめ労働日および各労働日の労働時間を決めることで、特定の日(夜勤日など)に8時間を超えて勤務させることや、特定の週(夜勤が重なる週やシフトの都合で休日が少ない週)に40時間を超えたシフトで勤務させることが可能となり、そのシフトどおりの勤務であれば時間外手当の支払いも生じません。(※夜勤勤務の深夜割増手当は生じます。)

 下記のいずれかの手続きが必要です。
  ・就業規則その他これに準ずるものに「1か月単位の変形労働時間制」の内容を定める
  ・労使協定を締結する(所轄の労働基準監督署に提出が必要)

 ①あらかじめシフト表や勤務カレンダーなどで、その月の勤務シフトを具体的に定める必要があります。
②シフト表などで特定した労働日・労働時間を、任意に変更することや延長、短縮することはできません。(任意に延長した時間については時間外手当の支払いが必要となります。)
③妊産婦(妊娠中および産後1年を経過しない女性)が請求した場合は、「1か月単位の変形労働時間制」を導入していても適用除外となる為、1日8時間、1週間40時間(法定労働時間)の範囲内で勤務させなければなりません。
④育児を行なう職員、介護を行なう職員、職業訓練または教育を受ける職員、その他特別の配慮が必要な職員に対しては、必要な時間を確保できるように配慮する必要があります。

宿日直

 労働基準法上の労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうものとされており、仮眠時間等の実作業に従事していない不活動時間が労働基準法上の労働時間に当たるかどうかは、労働者が不活動時間に使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができるか否かにより、客観的に定まるとされています。つまり、不活動時間が労働から完全に解放されているといえない場合には、使用者の指揮命令下にあるといえ、労働基準法上の労働時間に当たると考えられています。
 不活動時間について、労働基準法の労働時間の適用が除外される形で医師、看護師を宿直させるには、労働基準監督署長の許可が必要とされています。ただし、宿直の時間中に行われる業務が、昼間の通常業務の延長である場合には、許可されません。
 なお、労働基準監督署長の許可を受けたとしても深夜割増賃金の支払いは必要ですからご注意ください。

休憩時間

 労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間ですが、休憩時間は「業務から離れることが保障されている時間」です。したがって、例えば休憩中に電話番を任されているような場合は休憩時間とは呼べません。
休憩は継続する仕事による疲労を回復させるためのものになりますので、休憩時間は自由に利用させなければいけません。ただし休憩時間中の外出を許可制にしたりすることはかまいません。 休憩時間の長さは、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上が必要です。休憩をまとめてとるか分割してとるかは特に制約はありませんが、必ず労働時間の途中に与えなければいけません。

年次有給休暇

 年次有給休暇が発生するには次の2つの要件を満たす必要があります。
① 1年間継続勤務していること(初回は雇入れの日から6か月間継続勤務していること)
② 1年間の出勤率(初回は雇入れの日から6か月間の出勤率)が8割以上であること
※欠勤などが多く、出勤率の要件を満たさない場合、その年の年次有給休暇は発生しません
(例)2018年4月1日入社(上記の要件を満たしている場合)
   初回の年次有給休暇発生日(基準日):2018年10月1日
   2回目の年次有給休暇発生日(基準日):2019年10月1日
   ※その後も1年ごとに発生します

 年次有給休暇は正職員のみでなく、準職員、有期契約職員、パート・アルバイトなど勤務日数・勤務時間が少ない者であっても次のとおり発生します。
各職員の労働契約内容を見て、年次有給休暇の付与日数を確認する必要があります。

 原則として年次有給休暇は労働者の請求する時季に与えなければなりません。(時季指定権)
ただし、指定された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げるような場合、事業所は休暇を他の時季に変更することができます。(時季変更権)
なお、事業の正常な運営を妨げるかどうかは、事業所の規模および業務内容、その労働者の職務内容・性質、繁忙度、代替要員確保の難しさなどを客観的・合理的に判断しなければなりません。
ご質問のようなケースでは、一方的に病院が年次有給休暇の時季変更を行うのではなく、まずは職場の状況を職員に説明したうえで、該当する職員のなかで年次有給休暇取得日の変更をできる方がいないか交渉してみることから考えてみてはいかがでしょうか。
また、労働者に対して年次有給休暇を取得したことによる不利益取扱い(賃金の減額、精皆勤手当や賞与の算定などについて年次有給休暇取得日を欠勤扱いとするなど)はしないようにしなければなりません。

 年次有給休暇は原則として1日単位で与える必要がありますので、事業所は年次有給休暇の半日単位の請求に応じる義務はありませんが、労働者からの希望に応じて半日単位で与えることも可能です。
なお、半日単位での年次有給休暇を認める場合は、半日の考え方を職場でルール化しておく必要があります。
(例)午前8時30分~午後12時 AM休
   午後1時00分~午後5時 PM休

 労使協定を締結することで、年5日を限度として時間単位で年次有給休暇を与えることが可能です。
 ※労使協定で定める内容は以下のとおりです
 ①時間単位年休の対象労働者の範囲
 ②時間単位年休の日数(5日の範囲内)
 ③時間単位年休1日の時間数
 ④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数(例)2時間、3時間単位など

 年次有給休暇は基準日(年次有給休暇発生日)から起算して2年間で時効によって消滅します。

 年次有給休暇の賃金は下記の3通りがあります。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する額
いずれにするかは、職場のルール(就業規則等)に定める必要があります。
ただし、③は労使協定で定めなければなりません。

今回は、その中で特にご質問の多い②の「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」について説明させていただきます。
「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」とは、賞与など臨時に支払われる賃金、割増賃金のように所定時間外の労働に対して支払われる賃金は含めません。
ただし、夜勤専門の看護師のようにシフト等で所定労働時間が午後10時から翌朝の午前5時の時間帯を含む場合は、深夜の割増25%を含んだ賃金の支払が必要となります。
また、変形労働時間制を採用している場合は、各日の所定労働時間に応じて支払います。

 年次有給休暇は、労働者の請求する日に与えるのが原則ですが、労働組合や労働者代表と労使協定を締結したときは、その労使協定で定めた日に有給休暇を与えることができます。これを「年次有給休暇の計画的付与」と言います。
計画的付与の対象となるのは、有給休暇のうち5日を超える部分です(前年度の繰り越し分を含む)。つまり、少なくとも5日は労働者が自分の都合で自由に使えるように残しておく必要があります。例えば、20日の有給休暇がある場合、15日までは計画的付与で取得する時季を定めることができます。
計画的付与の方式としては、①事業場全体を休業にする「一斉付与方式」、②部署や班ごとに交代で休業する「交代制付与方式」、③個人ごとに休業日を決める「個人別付与方式」などがあり、職場の実情に合わせて方式を定めることができます。
労使協定において、付与日を決定した後は、その日に労働させることはできませんし、付与日を変更することもできません。一度決定した付与日に、どうしても労働者を出勤させる必要が生じた場合は、労使で協議して、労使協定を締結し直すなどの対応が必要となります。
なお、今般の労働基準法の改正で、平成31年度から、有給休暇の日数が10日以上ある労働者に対しては、毎年5日は時季を指定して有給休暇を与えなければならないこととなりましたが、計画的付与で有給休暇を与えた場合には、その付与した日数の範囲で、時季を指定して有給休暇を与えなくても良いこととされています。

 年次有給休暇には「まとまった日数の休暇を与えることにより、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図る」という目的があり、有給休暇を買い上げることはこのような目的に反することから禁止とされています。
ただし、法律を上回る日数分の有給休暇を買い上げることや、2年の消滅時効により権利が消滅した有給休暇を買い上げることは問題ないとされています。
なお、このようなケースであれば有給休暇を買い上げることは問題ないとされていますが、買い上げないといけないわけではありません。

賃金

 「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他の名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」(労働基準法第11条)とされています。具体的にどのようなものが賃金に当たるのかというと、実際に就労した労働時間に応じて支払われるものはもちろん、就業規則や労働契約等で支給条件が明確であり、労働の対価として労働者に請求権があるものは賃金に該当するものとされています。例えば、通勤手当や退職金、結婚祝金、死亡弔慰金について、就業規則等で支給条件が決められている場合には賃金となります。また、食事の提供について、①賃金の減額を伴わないこと、②食事の提供が就業規則等で定められ、明確な労働条件の内容となっていないこと、③食事の提供による利益が僅少なものであること、以上3つの要件を満たさない場合には福利厚生とはみなされず、賃金として扱うこととされています。さらに、住宅の貸与についても、貸与されない者に対して、貸与されている者とのバランスをとるために手当が支給されている場合には、賃金に該当することとなります。
しかし、支給条件が明白であっても実費弁償的な意味合いで支給される出張旅費・日当や、就業規則等に規定されていないため支給条件が不明確で、任意的・恩恵的なものとして支給される金一封等は、福利厚生として扱われ賃金には当たりません。 なお、賃金に該当するか否かと、税法上の「給与所得」に当たるか否かは取り扱いが異なりますので、注意が必要です。

 賃金の支払について以下の5つの原則があります。
 ①通貨で(通貨払いの原則)
 ②直接(直接払いの原則)
 ③全額を(全額払いの原則)
 ④毎月1回以上(毎月払いの原則)
 ⑤一定期日に(一定期日払いの原則)
  使用者は賃金を労働者に支払う必要があります。

例えば、現在では当たり前のようになっている給与の口座振込なども、実は上記①の通貨払いの原則の例外にあたります。したがって、給与を口座振込する場合は、労働者の同意を得ること、書面による労使協定を締結していること、賃金支払日の午前10時までに払い出しまたは払い戻しができるようになっていることなど、一定の要件を満たす必要があります。

上記②の直接払いの原則では、給与を労働者本人以外の者に支払うことは禁止されており、労働者の親権者やその他の法定代理人や労働者からの委任を受けた者であっても、支払うことはできません。但し、例外として「使者」に対して支払うことは差支えないとされており、例えば、労働者が病気で給与を取りに行けない時に、その配偶者が給与を受け取りに来るようなケースが想定されます。

次に③全額払いの原則については、給与から所得税や社会保険料、雇用保険料の労働者負担分などを控除することは問題ありませんが、積立金や貸付金などを給与から控除することはできません。但し、給与控除に関して書面による労使協定を締結している場合には給与の一部を控除して支払うことが可能になります。

④の毎月払いの原則とは、月の初日から末日までの間に1回以上給与を支払う必要があることを指します。なお、給与の締切期間については月の初日から末日に限定されているわけではなく、前月16日~当月の15日までといった設定をすることは差支えありません。

⑤の一定期日払いの原則については、例えば給与支払日を「月末」と設定することは問題ありませんが、「毎月10日~15日の間で支払う」、「毎月第4金曜日に支払う」といったような、日が特定されない設定をすることはできません。なお、所定支払日が休日の場合に、その支払日を繰り上げること、もしくは繰り下げることは一定期日払いの原則には反しません。

 病院側の都合により職員を休業させた場合は、休業期間中その職員に対して、平均賃金の60%以上の手当、いわゆる「休業手当」を賃金補償として支払わなければなりません。
また、所定労働時間の一部について休業させた場合は、就労した時間に対して支払われる賃金が休業手当の金額以上であれば問題ありませんが、もし休業手当の金額未満であればその差額を支払わなければなりません。
なお、休業手当の支払が必要なのは所定労働日に休業させた場合ですので、公休日については休業手当を支払う必要はありません。

 割増賃金の基礎となる賃金は「通常の労働時間又は労働日の賃金」ですが、労働基準法第37条第5項及び同法施行規則では、割増賃金に算入しなくともよい7種類の賃金を定めています。どのようなものがあるかというと、労働とは直接関係のない個人的事情にもとづいて支払われる賃金である、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、割増賃金の計算技術上困難なものである、臨時に支払われた賃金及び1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類の賃金です。

これらの賃金は限定的に列挙されたものですので、「通常の労働時間又は労働日の賃金」であってこれら7種類の賃金のいずれにも該当しないものは、すべて割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。

「通常の労働時間又は労働日の賃金」ということでは、手術に従事した医師に対して支払われる手術手当は、割増賃金の基礎となる賃金とされています。
しかし、深夜時間帯(午後10時から午前5時)において行われる看護等の業務に従事したときに支給される夜間看護手当は、割増賃金に入れなくてもよいとされています。

また、これら7種類の賃金に該当するか否かは、名称の如何にかかわらず「実質」によって取り扱うこととされていますので、たとえ家族手当と称していても、扶養家族数に関係なく一律に支給される手当や一家を扶養する者に対し基本給に応じて支払われる手当は、本条でいう家族手当には該当しません。

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